一見簡単そうでも、上手に淹れるには、それなりのテクニックがいるペーパードリップ。
試行錯誤しながら上手になっていくと、いろいろと条件を変えて自分好みの味をつくり出すことができます。
ペーパードリップはひと通りの「コーヒーの味の出し方」が理解できる、基本的なコーヒーの抽出方法です。
ペーパードリップでのコーヒーの淹れ方
ペーパーフィルターは使い捨てなので器具の手入れは簡単ですが、抽出の仕方によって味わいに違いが出てきます。
安定的においしいコーヒーを抽出するためにも、ペーパードリップの基本をおさえましょう。
※音声が出ます。
[su_youtube url="https://www.youtube.com/watch?v=lNJJIiA1RwA"]
引用:YouTube「ペーパードリップでのおいしいコーヒーの淹れ方【UCC】」
必要な器具
[su_list icon="icon: coffee" icon_color="#956843"]
- ペーパーフィルター
- ドリッパー
- サーバー
- 細口ドリップポット
- メジャースプーン
- カップ&ソーサー
[/su_list]
※お湯を静かにゆっくり注げるように、ポットの注ぎ口が細いものを選びましょう。
ペーパードリップに適したコーヒーと分量
ペーパードリップに適したコーヒー豆の量は、コーヒーカップ一杯分(120~140cc)あたり、10~12gが適量です。
使うコーヒーの種類や焙煎度はお好みで構いませんが、豆から挽く場合は「中細挽き」にしましょう。
なお、既に挽いてあるパッケージ商品の多くは中細挽きになっています。
コーヒー豆使用量のめやす
お好みで加減してください。
カップ | 1杯分 | 2杯分 | 3杯分 | 4杯分 |
目安量 | 10~12g | 20g前後 | 25~30g | 35~40g |
ペーパードリップでのおいしいコーヒーの淹れ方
step
1必要な器具をそろえ、お湯を沸かす。
飲みごろの温度に抽出するために、コーヒーサーバーにドリッパーをセットし、沸騰したお湯を回しかけて、抽出器具を温めます。
サーバーにたまったお湯をソーサーに乗せたコーヒーに移して、カップも温めておきます。
お湯は汲みたての水道水などを沸かしておきます。
お湯の量はコーヒー1杯分が120~140ccですが、蒸らしや、ペーパーにしみ込むお湯の量も考慮して、プラスで50~100cc多く準備します。
お湯が沸騰したら火をとめ、表面のボコボコした泡が鎮まったときが抽出に理想的な温度(92~96℃)です。
step
2ペーパーフィルターをセットする。
フィルターの底の接着部分を外側に折り、次に側面の接着部分を内側に折ります。
ドリッパーに軽く抑えつけるようにしっかりとおさめ、ドリッパーをコーヒーサーバーにセットします。
抽出したい杯数に応じて器具のサイズもいろいろありますが、フィルターとドリッパーは必ず形やサイズの合うものを使い、隙間なくセットしてください。
step
3フィルターにコーヒー粉を入れる。
コーヒー粉をペーパーフィルターに入れます。
コーヒー粉の基本量はコーヒーメジャースプーンすりきり1杯(約10グラム)ですが、しっかりした味のコーヒーを淹れたいときは山盛り1杯(約12グラム)を淹れます。
全体にムラなくお湯を注ぐために、ドリッパーを軽く振たり、手で軽くたたいたりして、粉の表面を平らに均しておきます。
コーヒー粉の中央をコーヒーメジャースプーンの角で押して、中央にくぼみを作ります。
step
4コーヒーを蒸らす。
おいしいコーヒーを淹れるために必ずやっておきたいのが、「蒸らし」です。
初めにコーヒーに少量のお湯を、くぼみの中央から渦を描くように、そっと乗せるように注ぎます。
ポイント
ポイントとしては「注ぐお湯の量を一定にして、まっすぐ落とす」ことです。
これができないと、コーヒー粉が動かず、うまく蒸らせないので、風味が出なくなることもあります。
粉全体に均一にお湯を含ませてから、10~30秒そのままにして蒸らします。
注ぐお湯の量は20cc程度、95℃前後が適温です。
サーバーにポタポタとお湯が数滴落ちてくるのを目安にしてください。
アドバイス
「蒸らし」の時に、コーヒーが膨らむのは、コーヒーに含まれるガスが放出されるためです。
ガスを出すことで、コーヒーとお湯がなじみやすくなり、お湯の通り道ができます。
つまり「蒸らし」は、コーヒーのおいしい成分を十分に引き出すための大切な工程なのです。
step
5お湯を注いで抽出する。
お湯で盛り上がった表面が沈んでいくのを確認したらお湯を注ぎます。
コーヒー粉の中心から外側に向けて、小さな「の」の字を描くように注ぎ、ペーパーの近くまできたら、中心に向かって渦を描きながら戻ります。
お湯を80cc→40cc→20ccと3回に分けて優しく注ぎます。
水面が上から1/3程度減ったら次のお湯を注ぐようにします。
ここでは一杯分を抽出するときに注ぐ湯量の目安を記載していますが、サーバーについている「一杯分」の目盛りを見ながら注いでみても良いでしょう。
ポイント
フィルターの「壁面」の側からぐるっとお湯をかけて抽出しないように。
この注ぎ方では、コーヒー全体から成分をまんべんなく抽出することができません。
お湯は、中心で小さく「の」の字を描くように注ぎます。
慣れてきたら、注ぐお湯の量とサーバーに落ちるコーヒーの量が同じになるように意識して注いでみてください。
ドリッパー内に注いだお湯の水位を一定に保つように、細口ポットから出るお湯の量を調節することがおいしく淹れるポイントです。
ポイント
カスの表面を見ると細かな泡が残っています。
細かな泡はコーヒーのアク、つまり雑味のもとになる成分です。
フィルターの内側で、コーヒーのカスが均一な厚みの層になっていて、表面に細かな泡が残っていれば、抽出されたコーヒーは、雑味のないクリアな味になっているはずです。
step
6ドリッパーをはずす
必要量になったら、お湯を注ぐのをやめて、コーヒーが落ちきらないうちに素早くドリッパーを外します。
コーヒーを絞りきると、色が濁ったり、雑味やえぐみが出てしまいます。
お湯を注ぎ終わったドリッパー内のコーヒー粉は中心が陥没し、周りが土手のようになっていればOKです。
step
7カップに注ぐ。
抽出したコーヒーは、温かいうちにカップに注ぎます。
Step1で注いだカップのお湯を捨ててから、コーヒーを注ぎます。
合計160cc注ぐとおよそ120~140cc(カップ1杯分)のコーヒーが抽出できます。
おいしいコーヒーの淹れ方応用テクニック
ペーパードリップの基本的な淹れ方を覚えて、安定してコーヒーを淹れられるようになったら、目的に合わせて、抽出法をアレンジするのもペーパードリップの楽しみ方のひとつです。
古い豆は点滴法で抽出
ネルドリップで使われる方法をペーパードリップに応用した方法が「点滴法」です。
「普通に注ぐ⇒お湯をポタポタたらす」を繰り返して、粉の成分を抽出しやすくします。
風味が安定するので、焙煎してから時間が経った豆、または少量しか抽出しないときに向いています。
step
1蒸らしは通常通り
最初の蒸らしは通常どおり30秒ほど行います。
step
2リズムよく「ふつう⇒ポタポタ」
蒸らし後の抽出は普通に数秒淹れたあと、ポットを少し持ち上げて、出るお湯の量をポタポタと垂らすように調整します。
この「ふつう⇒ポタポタ」をリズムよく3~5秒で行います。
step
3適量になるまで繰り返す
「ふつう⇒ポタポタ」を連続的にリズミカルに行い、必要量になったら、終了です。
フレーバーを引き立たせる抽出法
インドネシアのマンデリン、エチオピアのグジは香りの高い豆として有名ですが、それ以外の豆でも香りが引き立つコーヒーの淹れ方を紹介します。
step
1お湯の温度を高めに
97~98℃のお湯を用意します。
高温で素早く抽出抽出することによって、揮発性の香り成分を際立たせます。
step
2粉全体にお湯を回しかけて蒸らす
粉全体にお湯を回しかけます。
このとき、フィルターにお湯をかけないように注意してください。
あとの手順はペーパードリップ式と同じです。
step
3抽出後は早めに飲む
フレーバーが強調されるだけに、香りが飛ぶのも早いので、時間をかけずにコーヒーを楽しんでください。
エキスをできるだけ出す抽出法
濃厚なコーヒーを味わいたいときや、お湯で割って濃度を調節したいとき、アイスコーヒーにしたいとき、コーヒーゼリーを作るときなどに向いています。
step
1深煎りの豆を使う
豆の成分を抽出しやすくするために、深煎りの豆を使います。
熱を加えた豆はふっくらしてお湯が浸透しやすく、成分を抽出しやすくなります。
step
2細挽きにする
細挽きに挽いて粉の表面積を増やすと、お湯が浸透しやすくなります。
step
3蒸らし時間は長め
通常10~30秒の蒸らし時間を長めの40~50秒に長くしてできるだけ最初の蒸らしでエキスを抽出しやすくします。
あとの手順はペーパードリップと同じですが、お湯を注ぐほどコーヒーの濃度が薄まるので、必要量に達したらすぐに抽出をやめます。
その他のおいしいコーヒー淹れ方応用編
アイスコーヒーの淹れ方やその他いろいろな抽出器具にもチャレンジしてみましょう。
多彩なコーヒードリッパー
ドリッパーはコーヒーの粉にお湯を注ぎ、フィルターで濾過することによりコーヒー液を抽出する器具です。
ペーパードリップで使用する「ドリッパー」は、形や素材も様々。
最近では、多様な形状と材質のドリッパーが販売されていますが、形状は大きく「台形タイプ」と「円錐タイプ」の2種に分けられ、それぞれの形に合ったフィルターも販売されています。
また、形状の違いの他にも、穴の数、材質(プラスチックや陶器、ステンレス、銅)も様々です。
自分の味わいづくりにあうのはどれか、いろいろ試してみるのも面白いですよ。
ここでは代表的なドリッパーを3つ(形状と穴の数の違い)紹介します。
カリタ式(さっぱりした味わい)
キレがよく、さっぱりした味わいになるのがカリタ式です。
台形で底に穴が3つあるのが特徴。
カリタ式は内側の溝(リブ)が長くなっています。
注がれたお湯が長いリブに助けられてストレートに粉を通過し、3つの穴から素早くコーヒーが抽出されます。
さっぱりとしたコーヒーに仕上がります。
メリタ式(コクのある味わい)
コクのある深い味わいになるのがメリタ式です。
台形で底に穴が1つあるのが特徴。
メリタ式は内側の溝(リブ)が途中から始まっています。
リブが短く穴が少ないため、注いだお湯が粉の中に滞留し、ゆっくりと抽出されます。
味わい深いコーヒーに仕上がります。
ペーパードリップに適した挽き方は中挽き程度ですが、メリタ式のみ細挽きのコーヒー粉が適しています。
ハリオ式(まったりした味わい)
まったりとした味わいになるのがハリオ式です。
円錐形で底に穴が1つあるのが特徴。
内側の溝(リブ)は長くて渦を巻いています。
この独特な形状で、注がれたお湯を中心に向かって流します。
そのことによって、自然にお湯がコーヒー粉に触れる時間が長くなりコーヒーの成分がより多く抽出されます。
まったりとした味わいのコーヒーに仕上がります。
カリタ式 | メリタ式 | ハリオ式 | |
味わい | キレよくさっぱり | 深いコク | まったり |
形状 | 台形 | 台形 | 円錐 |
穴の数 | 3つ | 1つ | 1つ |
リブ(溝) | ストレート 長い |
ストレート 短い |
渦巻き形 |
抽出時間 | 早い | 遅い | 遅い |
ペーパーフィルター | 台形 | 台形 | 円錐 |
スプーン容量 | 10グラム | 8グラム | 12グラム |
コーヒードリッパーのリブ(溝)について
ドリッパー内部には「リブ」と呼ばれる溝が刻まれています。
リブにより生まれたペーパーフィルターとドリッパーの壁面の隙間は、抽出液を下に流れやすくしています。
つまり、リブの溝があまり無いものは液だまりしやすい特徴がありますので、必ずリブのあるドリッパーを選んでください。
コーヒードリッパー選びのポイント
形状やデザインが先ず気になるところですが、上記にあるようなリブの仕様や抽出時間の傾向を頭にいれておきましょう。
ついつい、ドリッパー底部の穴の面積が大きなものや、穴の数が多いものほど、すぐにお湯が流れて抽出が早くなるように思われがちですが、実際には、お湯はまず先にコーヒー粉と紙フィルターの抵抗を受けて通って行きます。
つまり、コーヒーの量や粒度、鮮度などからお湯が浸透していく状態をよく見極め、お湯を注ぐスピードをコントロールする「技術」の方が味わいづくりの影響が大きいと考えられます。